結婚を二度したわけではない。
「北京市人民政府婚姻登記処」へ届け出て受理された日と、日本へ戻って書類を出して受理された日がそれぞれあるのだ。
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| 乾燥して紙がそっくり返っている |
婚姻届けの煩雑さには閉口したが、最も気に障ったのは「お役所仕事」のその態度だった。全世界的な傾向なのだろうか。国際結婚だったこともあるのだろう。やっと準備を整え、登記処へ出向き書類を提出、かなり待たされた末に「来週来てくれ」という。すぐに日本に帰らないといけないので早く受理してくれと頼み込んだ。
「無理です」
一週間待てという。取り付く島もない、けんもほろろの対応だった。だがこちらもおいそれと引き下がるわけにはいかない。結婚は人生の一大事ではあるが、若い会社員にとって「もう一週間休み下さい」と気軽にリクエストはできない。そもそも、もう一往復したら飛行機代もバカにならない。「結婚証」の発行まで通常の手続きと所要日数は知らないが、来週のいつとも言わないし、第一こちらは一週間の盆休み中でとんぼ返りしなければならない。待つことはできなかった。
そこで、張さんの登場である。
会社の北京駐在員事務所で運転手と内勤をしてくれていた彼は、結婚登記所にも同行してくれていたので事の次第を把握している。一緒に窓口で長い時間掛け合ってくれたが、その結果が「待て」だった。
「咱们好好研究吧」
いくら思案したところで国際結婚の登記所に知り合いやつてがあるはずもなく、さすがに困り果てた。
「好好研究研究,好好・・・,好好・・・,烟酒,烟酒」
張さんがたばこと酒を買いに行こうという。古い手だが本当に効果はあるのか。だが、誰に渡す?渡す相手が見つからない。結局その日はいったんホテルに戻り、出直すこととした。
翌日、再び張さんと一緒に登記所に出かけた。道すがら、「たばこと酒を渡す相手が見つかった」と自分のことのように頷きながら言う。
「あの結婚登記所の隣のビルに知り合いが勤めている」
これを、つてと呼ぶのだろうか。
だが張さんは真剣だった。いまやその「隣のビルの知人」を介してアプローチする他はない。張さんと知人が再び長いこと掛け合ってくれた。
果たして、「結婚証」は翌日発行となり、当初予定の盆休暇内で収まった。張さん恐るべし。いったいどんなやり取りをしてくれたのだろう。28年前はまだたばこと酒の効力があったというハナシである。
張さんとその隣の知人には感謝の念しかない。

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